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翌日
月の無い夜だった。
暗闇のなか真っ白な衣装を着せられたエミリアはこの世の者と思えないほど美しかった。
目に涙を溜めながらトーマスと最後の口づけを交わす。
普段は絞首刑に使われている舞台に両手首を吊られるように縛られると、一群は去っていった。
恐ろしいほどの静寂
張り詰めた神経がプツンと切れ、なかば気を失うように眠りに着くエミリア。
その時、大きな羽音が聞こえた。
それは彼女の頭上を旋回しおもむろに前に降り立った。
翼を閉じた大きなコウモリ
コウモリがもう一度翼を広げるとそれはマントと化した。
フードに隠れた顔を見ることは出来ない。
しかし口元に光る尖った八重歯がそれが何かを語っていた。
今度こそ彼女は深い眠りに落ちた。
それは身じろぎもせず彼女を見つめると、おもむろに拘束を解き抱き抱えると遥か上空に飛び上がった。
そのままコウモリに戻るとあっという間に消えた。
残された村人たちは
あんぐりと口を開き何も言わないで空を見続けていた。
「その場で殺すかと」
村長が呆然としながら言う。
「吸ってる瞬間を見たい気もしましたね。」
トーマスもとい博士もこれまた呆然としながら囁いた。
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