怪談DJシリーズ「踏切」

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その明かりのない電車の車内に、もしも存在しないモノを見てしまったとしたら。 もしかしたら、目撃者の中には本当に「この世のものならざる存在」を見てしまった者もいたのかもしれない。 あえて口にしないだけで。 「意外と、自衛官はそういうの気にするんだよ。他の基地で勤務してる隊員に聞けばもっと色んな話が出てくんじゃないかな」 とは相方の言葉だ。 相方自身は内勤であったために、実際に遭遇したことはないらしい。 しかし一緒に勤務していた同期の隊員や先輩隊員から直接に聞いた話であるという。 「まあ、こうして言葉にしちゃうと大して怖くないんだけどな。オチもないし」 テレビのリモコンを操作しながら相方が呟く。 「でも実際に目撃した連中は怖かっただろうなぁ。俺はそういうの苦手だから、遭遇しなくてよかったよ」 話を聞いている私としては、直接相方に体験してもらいたかった。 非常に残念だと伝えると、彼はそれこそ「得体の知れないモノ」を見る目で私を見つめた。
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