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【Side Chiho】
「――――ねぇねぇ! この表紙!
ユキヤじゃない?」
――ビクッ!
「ほんと! 顔半分隠れてるけど、きっとそうよ」
「ね、そうだよね。最近、髪の色変えてから段違いに色っぽくなったもんねー。ひゃー、カッコいいなぁ。
コレ、買おうかなぁ。どうしよっかなぁ……うん、やっぱ買っちゃお!」
「エリは、ガチのユキヤファンだもんねー。ね、後で私にも貸してよー?」
「えー、どうしようかなぁ?」
「わぁ、いけずぅー!」
「きゃっ! もう、何すんのぉ。あははっ――――」
「……っ……ぷ、はぁっ……」
キャーキャーとはしゃいで騒ぎながらレジに向かっていく女の子たち。
その後ろ姿を恐る恐る振り返りながら、ずっと止めてた息を一気に吐き出した。
良かった。僕が立ち読みしてたところは、見られてなかったみたい。
もう一度そっと周りを確認してから、ぎゅっと抱え込んでいた雑誌をゆっくりと胸元から離す。
その表紙では、女の人の肩に顔を半分うずめたユキヤが、色めいた流し目をこちらに向けていた。
艶麗に笑って、見る者を誘うこの人は……この男は。
僕の知ってるアイツじゃない。
――雪夜(ゆきや)。
逢いたい。
僕、“お前”に逢いたい。
逢いたいんだ。
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