scene.3

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「寒いか?」 「え?…あ、平気、大丈夫!」 「ヤセ我慢するな」 そう言うと、斎はバッグの中からジャージを取り出した。 『蘇芳館高校男子庭球部』と背中にロゴが入ったジャージ。 白が基調で、濃いブルーのラインが入った爽やかなデザインだ。 「着ろ」 「えっ!いやいや、それは斎が着なくちゃ」 「俺はいい」 「斎は選手なんだから、身体冷やしちゃダメだよ!」 「俺は大丈夫だ」 なかなか応じようとしない私にしびれを切らし、斎は強引な手段に出る。 「鳥肌になってる状態で強がっても、無意味だな」 「…」 私の背後から無理やりジャージを羽織らせた。 ここまでされては意地を張っても仕方ないと、私は折れることにした。 「…ありがとう」 「…」 観念して、ジャージに袖を通す。 斎のジャージは大きくて、私にはぶかぶかだ。袖から手が出てこない。 丈ももちろんデローンと長くて。 でも、とても暖かい。 小さい頃からいつもそうだ。 斎は自分のことよりも、まず私の心配をしてくれる。 こうやっていつも庇ってくれる。 幼馴染の私でさえ、そうだ。 彼女なんかいたら、きっとめちゃくちゃ大事にするんだろうなぁ…。 「…っくしゅっ!!」 ぼんやりそんなことを思っていたら、いきなりくしゃみが出た。 …あ~。 どうりでさっきから鼻がムズムズすると思った。 ちょっとスッキリ! 私がそんな呑気なことを考えていると、斎が心配そうな顔を向けてきた。 「まだ寒いか?」 「え?…あぁ、大丈夫ー!ちょっと鼻がムズムズしてただけだから」 「そうか」 「うん…っくしゅん!!」 って、言ってる側からまた?! 私は思わず自分にツッコミを入れる。 うわ、風邪ひかせたと思って、斎が気にしちゃう。 私がそう思って斎を見上げた途端、身体の自由が利かなくなった。
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