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「初めまして。大野るりです」
「橘春です。春って書いてしゅん」
「女の子みたいだよね。妹は秋って書いてしゅうちゃんなんだって」
「夏と冬もいるんですか?」
「いや、さすがにいない」
あ、ちょっと笑った。大野さんは今は表情が硬いけど、多分、もう少し仲良くなったら楽しく話せるタイプだと思う。歳も近いと思うし。
「多分春くんが一つ上じゃないかな?」
心の中を読まれたのかと思った。
「今年で二十歳です」
「あ、じゃあ成人式ですね」
「そう! るりちゃんはうちで写真撮るんだよね」
「はい」
軽く返事をすると、大野さんは荷物を置いて、今日お出かけする子供たちの写真と名前をざっと見た。
「春くんとるりちゃんにヘアメイクをしてもらって、着付けは桜月さんにして
もらいます。春くんは基本男の子だけど、たまに三歳さんもやってもらいます。るりちゃんが女の子全般ね」
「わかりました」
「もしかすると、春くんには袴の着付けお願いしちゃうかも」
「了解です」
できるだけ自分がやるから、と桜月さんが自分の胸をたたいたところで、今日の最初のお客さんが来た。
おはようございます。おめでとうございます。各々が言葉をかけ、最初に来た子供の名前を呼ぶ。七歳のみつきちゃんに、五歳のきょうごくんだ。妙にテンションの高いきょうごくんを先にトイレに行かせて、お姉さんらしくしているみつきちゃんは、肌着にお着換え。七歳の女の子は、もう大人びてきているから、僕はもちろんカーテンの外に追い出される。元気よくトイレから帰ってきたきょうごくんは、手を洗ったのか?
「ちゃんと手、洗った?」
「うん!」
「じゃあ、襦袢だけ着ちゃってから、髪の毛かっこよくしようか」
五歳にカーテンはいらない。その場でばばっと長袖とズボンを脱がし、襦袢を簡単に着せる。小さな足袋もはかせて、セット台へ。
「今日どうしようか。ツンツンかふわふわか」
きょうごくんのお母さんを手招きし、一緒に決めてもらう。
「きょうごの好きなのでいいよ」
「ツンツン!」
「オッケー」
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