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「今まで男っ気もなく20代を折り返そうとしていて、心配していたしな」
父は上機嫌に言葉を重ねていく。こんな時、母は一切口を挟んでこない。
女は一歩下がって付いていく。そういうものだと、昔から父がしきりに言っていたのを思い出す。
もし学生時代に彼氏ができたと話していたら、父はどんな反応をしていただろう。きっと、猛反対をしたに決まっている。
ふと真美に目をやれば、話を聞いているのか聞いていないのかよくわからない顔で、昨日作られたとろとろの肉じゃがを口に運んでいた。
「ま、一度会って話してみろ」
結局、こちらの返事も聞かないまま、父は話を終わらせた。
いつものことだ。この家に、私の発言権などない。
そうやって今までずっと良い娘をしてきたわけで、それでこの家が平和ならそれでいい気もする。
小さな諍(いさか)いが続くよりも、よっぽどいい。
夕食はその後、父の自慢話が終始続いた。
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