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「アンティークはものの価値がわかれば簡単だ。価値以上の値段で買わなければ絶対に損はしない。高級アンティークじゃなくて、うちにあるようなものなら俺は一目見ればわかる。流行りとかもあるから、売れにくいものはわざわざ買わないけどな」
「古いものが好き、とかじゃないんですね」
「もの自体に価値があるのは古いものくらいだよ。今作られてるものに価値があるものってどれほどあると思う?ブランドとかストーリーとかやたら背景を語りたがるだろ。みんな人任せで自分の基準を失ってるんだよ」
「ふぅん。その拠り所のない自信がどこから来るのか謎ですが、貝瀬さんが直感で生きているということはわかりました」
「おまえ、変な奴だな。そんなこと知ってどうすんの?大学生なら大学生らしく夏休みはバイトでもしろよ。なまっ白い顔して、この暑いのに全然焼けてない」
「貝瀬さんこそ、あんな薄暗いとこに篭ってオシャレ雑貨屋やってるのに、性格がイメージと全然一致しませんね。商売の計算とかできてるのか本当に謎です」
「ほっとけよ」
人の心に無遠慮に侵食してくる笑顔でそう言って、ワインを飲み干す。濡れた唇が色っぽいと思った。手だけでなくあの唇で触れられたら…、その妄想はますます自分を苦しめた。
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