ふれて

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相変わらず夜はベッドに寝転びながら、ベルベットのリボンを手元に垂らし、貝瀬に触れられることを思う。本当にどうかしている。相手は男だ。たとえ自分の欲を認めたところで、これ以上先に進む希望はどこにもない。そう思うと胸が締め上げられるような心地がする。 スエットの下にそっと手を滑り込ませ、目を閉じて貝瀬の手をイメージした。節が目立ち骨ばった長い指、手のひらは厚みがあり大きい。手の無骨さに似合わず、指先の動きは恐ろしく細やかでエロティックだ。絹布にそっと触れるような柔らかい手つき。その手が兆し始めた熱を包み込み、ゆっくりと撫で上げる。 快感を与えられているのは自分の方なのに『ここも、触ると気持ちいい』溶けるような低い声で囁いて、あのうっとりとした目で俺を見ている。先走りを丁寧に指先で広げ、くびれまでくるりと撫でた後裏筋を辿る。十分に全体を濡らすまでいつも通りの手つきで緩やかに撫で続ける。すぐにとろりと濡れそぼり、立ち上がったそこを指を絡めて握り込む、あの人の手。 「かい…せ…、さんっ…」 もっと、触って。撫でるばかりじゃなくて、もっと力を込めて触れて欲しい。欲望を促すように誘って欲しい。本能のまませがみたい。 もっと。体をねじ伏せて、嫌という程触られていることを意識させて欲しい。 『俺に触られたいの?』 あぁ、もっと、触られたい。触って。こんなんじゃ足りない。全然足りない。 「はぁっ…あっ…ん」 もっと激しく。もっと強く。もっと思うままに触って。 いつも通り余裕のある笑みを浮かべ、遠慮なく投げかけられる視線。その熱を感じながらびくびくと快感に溺れ、どうしようもなくふしだらに体を反らせ、さらに刺激を求める。 手の動きが雑になるのと同じスピードで思考が解放される。あの手を汚したい。あの手の中に吐き出したい。今すぐ。 尽きる感覚とともに自分の手に白濁が溢れ、目を開けた。息が上がっている。どうしようもなくやるせない気分になってもう一度目を閉じた。欲望に溢れかえる妄想で汚れた下着がすでに気持ち悪く、スエットの内側の湿り気が虚しさを増長させる。熱は体に残るばかりで、心は全く解放されない。あの人のことばかり考える。
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