200人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
するすると指は肌を辿る。カーブに沿って、人差し指が辿った場所を中指が追いかけ、薬指は震えるように細やかな後味を拾い集める。ひとつひとつの指が与える感覚に嫌でも集中してしまう。反対に、戻るときはそわりと波が引くように刺激が拡散する。
触れるその手が、俺の中の熱と欲と情をゆっくりと目覚めさせていく。体の隅で眠っていた知らない感情を引きずり出す。あなたはそれを知っているんだろうか。知ってて迂闊に俺に触れ、もっと、もっとと浮かされるような欲望を掻き立てているんだろうか。
もっと、触れられたい。余すところなく触れられて、身を委ねてしまいたい。そして、もっとあなたを知りたい。優しいうっとりとした顔で俺の肌に指を滑らせる時、俺はあなたの心に触れたい。素手で撫で回し、柔らかな部分を抑えて刺激し、どうしようもなく感情を溢れさせたい。
抱きあいたい。侵食しあいたい。溶けて混じりたい。統一感のないごたまぜの悦楽と願望をため息に混ぜて聞かせ、甘く誘う。あなたはひとり熱に溶け始めた俺を見て柔らかく微笑み、全部お見通しだとでも言うように口づけを落とす。
* * *
最初のコメントを投稿しよう!