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小刻みに腰を揺らし、互いに熱を溜め放出させない場所を服の上から擦り合わせる。
だから逃げたのに。だからカウンターの向こうにいたのに。誘いに抗えない俺が悪い。いや、こうなることを知っていて手を出してくる貝瀬が悪い。
「おまえ暴力的にヤラシくて可愛いすぎるよ。いつもさらっとした涼し気な顔してるくせに」
「可愛いとかなくて、貝瀬さんが俺の体を弄ぶからいけないんです」
「それ本当に意味違って聞こえるって」
結局ぎゅっと抱きしめられて、なだめられる。不満は残るが、本当にいつ客が来るかわからないからこれより先を求めるわけにもいかない。すぐにぽいっと放り出されず、膝に乗せられたまま腰を抱かれて安心する。
「前の彼女って、可愛いかった?」
突然の質問に頭がついていかない。
「はっ?普通ですよ。何急に萎えること言い出すんですか」
「だって女子高生だろ?ふわふわっとしてんだろうなと思って」
「貝瀬さんは、ふわっとしてるのを抱きたいんですか?」
「違う。それと俺ってギャップがありすぎるんじゃないか、とかさ…」
何を言い出すかと思えば、そんなこと…。今更そこを気にするなんて、見た目の逞ましい体の男らしさとか、今みたいな勝手な近付き方とか、そっちの全部のギャップが可愛らしく思えてくる。
「俺、あなたのことがすごく好きで、この先をずっと待ってるんです。じゃないとここだってこんな反応しません。そんなことで今更焦らさないでください」
「ごめん。わかった」
「もう俺、我慢できるギリギリですよ。今だって、あなたをこの椅子から引きずり下ろして無理やり俺のものにしたいくらいです」
「全部、おまえのものだって」
そっと優しく唇が合わされた時、ちりんとベルが音を立てた。
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