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「えっ?どうして?」
「全く反省してませんね。あんなのじゃ俺の身が保ちません。第一大人のやることじゃないでしょう」
「わかったよ。…反対に客がいない時に見えてるところは触りまくっていいってことだな」
瞳にたっぷりと色気を漂わせ、こちらを見据える、この目に弱い。
「…たとえば、その薄い瞼、頬、うまそうな唇」
目を細め、わざとゆっくり言いながら、俺のひとつひとつのパーツにじっとりと視線を這わせていく。
「皮膚が薄い喉、鎖骨、綺麗な襟足…」
熱っぽい眼差しに焼かれ、貝瀬に触れられることを想像して、こくんと息を飲んだ。愛おしくてたまらないというように触れられたら、どれほど甘美だろうか。
…ダメだ。それじゃ今と変わらないじゃないか。心を強く持とう。
「やっぱり営業中は『手のみ』とさせて頂きます」
「えーっ」
貝瀬の子供っぽい不服そうな表情にくすくすと笑う。
「店が閉まってれば、いくらでも触っていいですから」
目がキラキラと輝いている…ように見える…そんな貝瀬を見ながら、ふと途切れた会話を思い出す。同性であることを気にしているのが意外だった。ちゃんと付き合わないと嫌だとか言うから、まさかそこで停止しているとは思いも寄らなかった。『ごめん、わかった』って返事は先に進もうという意味なのだろうか。初めて体を重ねることをリアルにイメージして急に体が火照ってきた。まだ素肌を合わせ抱き合ったことすらない。
俺の方はと言えば、男を性的対象として見るのは初めてなのに、全く戸惑いなく貝瀬を受け入れたいと思った。行為のやり方をこっそりと調べるだけで妄想は膨らみ、体の中から貝瀬に触れられるのはどんな感じだろうと想像する。色気溢れるあの人に嫌ほど求められたい。初めてあの人が俺の中でイく時は胸に抱きしめたい。俺が普通じゃないのかもしれない。貝瀬が魅力的な男であるにしても、男に抱かれたいなどと突然思うなんて。
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