なれない自分

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いつも私が先にシャワーを浴びて、そうしてからあなたは身体だけシャワーでサラリと流して出てくる。 ごはんは軽く胃に入れて、それでおしまい。 この関係に、余計な時間は必要ない。 そこに居たのが当たり前であるかのように、二人ベッドで向き合って、熱い視線を絡ませる。 ほんの一瞬、吐息がぶつかる距離、キス。 「できればいいんだけどね」 「えぇ、キスはダメよ、知っているわ」 「僕から言ったことなんだけどね」 「そうね」 お互いに微かに笑う。 分かっているわ、キスはしない。 あなたから最初にそう言ってきたんだもの、言いつけは守るタイプよ。 自分のことを守るため、そのことは教えるわけにはいかないけれど。 「楽しみたいだけのセックスに、キスがないだなんてね」 白々しくそう言って笑う彼の薄い耳たぶをつまむ。 「本当だわ」
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