なれない自分

6/7
前へ
/7ページ
次へ
ずっとそうしなければと思い過ごしてきた。 それでいい、それが私にしっくりくると、自分に言い聞かせてきた。 それでも悔しいのは、悔しかったのは。自分をだまし続けてきた結果なのだと、思い知らされた。 まさかこんな形で気づかされるなんて、思ってもみなかった。 私と居るときにはない陽気を身に纏った彼から、私にはないものを身に纏った彼女から、離れて。 自分の役割だと本音を底に押し込めて、そうやって過ごしてきたのに、踵を返す。 一人暮らしの自分だけの空間で、声を殺して泣くことしかできなかった、それが惨めだった。 彼に会うのはやめよう。 そう決めたのは、その日から一週間たった今日。 これから帰って、シャワーを浴びて。 そしてあのボロボロでも私の足に馴染むパンプスは捨ててやる。 女の子には敵わないことを知ってしまった。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加