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「できないよ。招かれてもないのに……」
枕を抱えたまま僕が躊躇していると
「もしかしたらの話さ、征司くんが帰りたくても帰れない状況だったとしたらどうする?」
窓辺で足を立て
椎名さんは何度か舌を打ち鳴らした。
「征司お兄様が?!」
まさか、あの人に限ってそんなこと――。
言葉の続きは分かってるとでも言うように
椎名さんは頷いて。
「電話口で彼と話したかい?」
鋭い瞳で僕に問う。
「いや、でも……」
「それじゃ赤い制服の衛兵に囚われてないとも限らない」
「まさか!冗談でしょ?」
と唐突に。
「クリスチャンのこと少しは知ってる」
「は?」
「あいつ綺麗は面しているが――あっちの方は男そのものだぞ」
「はぁ!?」
「もしかしたら花嫁は征司くんの方かもしれないぞ?」
――椎名さんは言った。
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