158人が本棚に入れています
本棚に追加
椎名さんに抱かれている間。
ブロンドを抱く征司と
僕を愛しげに抱く九条さんの幻影が
瞼の裏で繰り返し点滅した。
「良かったか?」
「うん……」
彼との情事に不思議と虚しさはなかった。
「そりゃよかった」
「何?ご不満?」
むしろ椎名さんの方が
普段は吸わないタバコをふかして
「いや。でも抜け殻を抱いてた気分さ」
神妙な面持ちで窓辺に腰を下ろす。
「なあ、明日にでもイギリスに行けよ」
「は?」
「アーサー卿のお屋敷にいるんだろ?直接お兄様に会いに行け」
言うと煙を吐きながら
椎名さんは流し目で僕を見下ろした。
最初のコメントを投稿しよう!