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現金なもので。
「でも征司が英国貴族になれば、お城の一つくらい妹の私に回ってくるかしら?」
先日まで天宮家の後継者問題で
血眼になっていたくせに。
「どうせガセだろ?そんな馬鹿げた話――」
欲を出すお姉様とは裏腹。
薫はちっとも取り合わず
読みかけの本から顔も上げない。
「でも確かな筋から聞いた話よ」
「イギリスからの要人ですか?」
僕が口を挟むと
貴恵は女優のように眉を上げ
「ええ、そう。だから間違いないわ」
すっかり話を信じ込んだ様子で
仰々しく頷いた。
と――。
「失礼します」
戸口のところに
何やら手にした満がやってきた。
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