第1章 リカとアンジュ

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サンドイッチに齧りつくと ビーチチェアに身を投げる。 「君も座れよ」 「ああ。うん……」 アンジュに進められるがまま 隣の椅子に腰を下ろすけれど。 手渡されたグラスが すぐに手の中で汗をかき始める。 「言っておくけどうちの母親はあまり料理が上手くない」 「何?」 「家ではいつもケータリングか外食なんだ。だからこんなサンドイッチでもまあ、本人としては頑張ってる方」 チーズが分厚いとか。 マスタードが利き過ぎだとか。 その後もたわいない文句を言い 声を潜めてアンジュは笑う。 (どうしよう……) まるで目の前の玉虫のことなど すっかり忘れてしまったように。
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