第1章 リカとアンジュ

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「あら、いやだ。これは何?」 当然。 食卓に囚われた玉虫に気付いて 母親は眉をしかめた。 「玉虫だよ。綺麗でしょ?」 悪びれることなく アンジュは肩をすくめる。 「こんなものに入れてどうするの?」 「蒸し焼きにして食べるんだ」 冗談ではなく 直射日光にさらされた玉虫は 今にも蒸し焼きになりそうで僕は気が気じゃなかった。 「冗談だよ。綺麗だから少し見てただけさ」 アンジュはそんな僕の顔を じっと見つめたまま。 「夏は始まったばかりだ。早くお逃げ――」 意味深にそう言うと。 玉虫を捕えていた ガラスの蓋を持ち上げた。
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