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「あら、いやだ。これは何?」
当然。
食卓に囚われた玉虫に気付いて
母親は眉をしかめた。
「玉虫だよ。綺麗でしょ?」
悪びれることなく
アンジュは肩をすくめる。
「こんなものに入れてどうするの?」
「蒸し焼きにして食べるんだ」
冗談ではなく
直射日光にさらされた玉虫は
今にも蒸し焼きになりそうで僕は気が気じゃなかった。
「冗談だよ。綺麗だから少し見てただけさ」
アンジュはそんな僕の顔を
じっと見つめたまま。
「夏は始まったばかりだ。早くお逃げ――」
意味深にそう言うと。
玉虫を捕えていた
ガラスの蓋を持ち上げた。
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