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解放された玉虫は
特に酷い目にあったという風でもなく。
優雅に弧を描いて
元いたハイビスカスの垣根の方へと飛んで行く。
「ママ。今日のサンドイッチも最高に美味しいよ」
アンジュは誰もがうっとりとする笑顔で
母親の頬にキスすると。
「でももうお腹いっぱい!」
突然駆け出して
頭からプールに飛び込んだ。
「まったく。いつまでも子供で困るわ」
母親はそんな息子を
眼を細め愛しげに見つめる。
あざとい笑顔で嘘がつけるほど
もう大人だなんて――。
これっぽっちも疑ってはいないみたいに。
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