第1章 リカとアンジュ

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解放された玉虫は 特に酷い目にあったという風でもなく。 優雅に弧を描いて 元いたハイビスカスの垣根の方へと飛んで行く。 「ママ。今日のサンドイッチも最高に美味しいよ」 アンジュは誰もがうっとりとする笑顔で 母親の頬にキスすると。 「でももうお腹いっぱい!」 突然駆け出して 頭からプールに飛び込んだ。 「まったく。いつまでも子供で困るわ」 母親はそんな息子を 眼を細め愛しげに見つめる。 あざとい笑顔で嘘がつけるほど もう大人だなんて――。 これっぽっちも疑ってはいないみたいに。
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