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「ゆっくりして行って」
「ありがとうございます」
母親が去ってしまうと。
目を閉じたまま
仰向けに水面に浮かんでいるアンジュを
僕はしばらく眺めていた。
太陽の光を浴びて
蜂蜜色の髪がキラキラと水面に広がる。
まるで
青いゼリーの表面を泳いでいるかのように
その表情はあまりに柔らかく甘美だ。
小鹿のよう。
本当に天使のよう。
残酷さなんて微塵も感じない。
だけど――。
「君も来いよ」
それも
僕と目を合わせるまでの話だ。
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