第1章 リカとアンジュ

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戸惑っている僕に。 「虫は逃がしてやったんだ」 水に濡れた天使は 「代わりに君が来い」 薄い唇を吊り上げて 恩着せがましく命じる。 暑さのせい。 いや すっかり彼の毒に当てられて。 「……分かった」 僕はすでに 思考力など持ち合わせてはいなかった。 だから――。 ビーチチェアの上に 脱いだパーカーを放ると。 「待ってて」 ほんの少し 形ばかりの準備運動。 そうして――。 アンジュの待つプールに 僕は勢いよく飛び込んだ。
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