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少女のぬくもりにハッとなりすぐに回した腕を緩めてスッと一歩後退すると「ごめん」と謝った。俺は何も悪いことはしていない。これは不可抗力だ。けど、ここは謝るべきだ。だから、これでいい。
少女は左右に軽く頭を振り「私こそ」と呟いた。
よかった。少女は俺のこと変態とは思っていないようだ。
紺色のブレザーにチェックのスカート。胸元にはリボンも見える。どこかの高校の制服だろう。俯き加減の少女は、なんとなく顔色が悪く映った。具合でも悪いのだろうか。もしかして今ぶつかったことがショックで具合を悪くしたってことも。いやいや、考え過ぎだ。ならば、血色の悪い感じは何を意味するのだろうか。どうにも嫌な考えが浮かんでしまう。
「あの、大丈夫? 体調でも悪いの?」
そう声をかけたが、少女は「大丈夫です」とか細い声で話すとお辞儀をして小走りに駆けていってしまった。
本当に大丈夫なんだろうか。
走り去る少女の背中をみつめつつ、なぜか心が騒めいていた。知り合いってわけじゃないから気にすることはないと言えばそれまでだが。
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