「愛猫」谷崎トルク

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 2  寺坂と連絡が取れない。誘いは二度断られた。  土曜日の午後、ベッドの上で天井を見上げながら悪態をついた。付き合って二年。今までこんな事はなかった。  仕事が忙しく体が疲れているから家で休むと言われ二週間。二度の週末を一人で過ごした。  確かに寺坂の部署は今月から新しいプロジェクトを立ち上げたため忙しかった。けれど、幾らなんでも返信の一つくらいできそうなものだとスマホを弄ったが、どれだけ待っても何の連絡もなかった。  飽きられたか、嫌われたか――。  ここの所、自分が寺坂に対してどう接していたかを思い返す。確かに我儘だったかもしれない。優しさに付け込んで、身勝手に振り回したかもしれない。  けれど、それは付き合い始めた頃からずっと同じ調子だったはずで、ここ最近、特に酷くなったわけでもなかった。飽きられた可能性はあったが、寺坂は嫉妬深く、いつも自分に執着しているように思えた。どうしてだろう。考えても答えは見つからなかった。  あまりにも暇だったので羽根田に連絡してみる。けれど、こちらも捕まらなかった。  あれから羽根田とは何度か食事を重ね親しくなった。最初に出会った時に、否応なくお互いの素を見せ合った事もあり、プライベートでも気負わずに話せた。  時々、同じ会社の人間だと忘れてしまうほど打ち解けていた。  羽根田も忙しいなら仕方ないか……。  寺坂に会いたい。優しく髪を撫でられて抱き締められ、仕方のない奴だなと呟かれたかった。  好きだと囁かれ優しくキスされた後、抗う事ができないほど滅茶苦茶にされたかった。  寺坂の体を思い出しながらベッドの上でそっと目を伏せた。
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