「愛猫」谷崎トルク

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「俺が寺坂さんの事、本気で好きなの知ってるだろ? 寺坂さんに捨てられたら、俺死ぬから」 「おいおい、冗談はやめろ。おまえこそ、どうなんだよ」 「え?」 「羽根田と仲良く食事してたじゃないか。やっぱり若い男の方がいいのか?」 「羽根田とはそんなんじゃないよ。あいつノンケだし、彼女いるし」 「だったらそれと同じだろ? 何を勘違いして熱くなってるんだ」  そう言われて急に冷静になった。 「本当に、あの女と何もない?」 「ああ」 「忙しかっただけ?」 「そうだよ」  寺坂は大きく溜息をついた。温かい手が頬を撫でる。 「俺が好きなのはおまえだけだ。信じてくれ」  見つめられ、強く抱き締められて小さく震えた。寺坂の匂いに包まれながら目を伏せる。胸元に鼻先を押しつけると髪を優しく撫でられた。 「もう羽根田とは仲良くするな」 「嫉妬、してるの?」 「そうだよ」  耳元で囁かれた。背中に腕を回すとシャツの上から寺坂の締まった筋肉の感触が伝わってきた。この男を手放したくはない。ずっと一緒にいたい。男女の間で交わされるような約束が叶わないなら、目に見える確証が欲しかった。 「俺、寺坂さんの事が好き。本当に好き。だから、裏切らないで」 「分かってる」 「抱いてよ、寺坂さん」  その日の寺坂は、一度も手荒な事をしなかった。普段の寺坂のように優しく、俺のどんな我儘も全て包み込んで甘やかした。
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