「愛猫」谷崎トルク

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 やはり相手は篠田だった。  元からずっと付き合っていたのか、ヨリが戻ったのか、最近付き合い始めたのかは分からなかったが、二人が関係しているのは明らかだった。  俺の方が遊びだったのか……。  この二年、ずっと自分が二番の存在だったとは思いたくもなかった。ただ冷静に考えれば――そうである事は信じたくはなかったが、認めざるを得なかった。  寺坂は女もイケる。だとしたら、男の自分は寺坂の隠された部分の欲望を満たすだけの存在でしかない。寺坂は表と裏の顔を器用に使い分け、誰にも悟られず、二人の人間と関係を持っている。その事実に、俺は酷く傷ついた。  片方の寺坂から求められたに過ぎない己の存在が、惨めでみっともなくて、本気だと思い込んでいた自分が滑稽に思えた。  俺は好きだった。本気で好きだった。それなのに、それなのに……。  好きと言ってくれたのは、何度も言ってくれたのは全部嘘だったのか?  あんなに何度も抱いたのに、それも嘘だったのか? 俺だけでは満たされなかったのか――。  俺にとって寺坂は初めて本気で好きになった相手だった。体だけの関係ではなく、心まで満たされていると思っていた。  それなのに、どうして――。  恋愛でいつも優位に立っていた自分が、振り回して好き放題していた自分が、本当はされる側だったのかと思うと苦しくて涙がこぼれた。  これからどうしよう。どうすればいいんだ。  答えを探してみたが何も見つからなかった。
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