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挨拶の瞬間、頼くんと目が合った。
でも、
頼くんは顔色一つ変えず、まるで本当に初対面の部下と会うみたいに私と接して、
「すみません、どなたかこの資料を二十部ずつ作成して後で持ってきてもらってもいいですか?」
私以外の社員達に向けて声をかけて、
「あっ、私が作成しておきます」
「では、宜しくお願いします」
総務課を出て行った。
「もー、来栖さん、大丈夫?あ~あ~…こんなにお土産をぶちまけちゃって~…まだ時差ボケなんじゃないの?」
落としてしまったお土産を拾ってくれる主任の言葉に、
「そ、そうかも……しれません……」
なんて返すけど、
全然そんなんじゃない。
時差ボケなら、むしろふっとんでしまう程の衝撃の一時だった。
「で、今のが例の総支配人。〝若様”よ」
「もしかして……〝若槻”だから〝若様”……?」
「ふふっ、そうよ!そして、あの若槻グループの御曹司だから〝若様”」
「は、はぁ……」
〝若槻グループ”
〝若様”
何で直ぐにピンと来なかったんだろう。
けど、
まさか、若槻の若様が〝頼くん”とは思わなかったんだもの……!
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