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その彼女の手から、あの女の“報告”を知らせる携帯を受け取る。
中には、メールが一通…
“彼のスープにアレを入れたわ。今から二人で食べるところ”…
ああ、どうしてやってしまったんだ…おまえがやらなければ、僕までしなくて済んだのに!
見れば彼女は台所で、ビールと、真っ白に冷えたグラスを用意している。
…今しかない…もう、やるしかないんだ。
僕は、彼女のスープに毒を入れた。
「おまたせ!さあ、まずは乾杯しましょ!」
彼女がモコモコと泡を揺らして、ビールのグラスを掲げる。
「お誕生日、おめでとう!」
「ありがとう。」
僕たちの、最後の晩餐が始まった。
「ねえ、食べて食べて。」
彼女が、自慢の料理をすすめてくれる。
いつも僕が先に食べないと、遠慮して口をつけないからな…。
僕は、こんな恐ろしいことは早く終わらせたくて、
一番に食べてほしいトマトのスープを勢いよく掻っ込んだ。
…その時だった。
『おいしい?』
聞きなれた声が問い掛ける。
「ねえ、おいしい?」
でもそれは…彼女のものではなかった。
それは…あの女の声だった。
「…どうして…。」
目を見開く僕に女は言った。
「言ったでしょ?今日やるって。
ちゃんとわかるように、全部言ってあげたじゃないの…
そこに付いてる、最低なことばっかり考えてる頭で、思い出してみて?」
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