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“浮気をしているくせに、品行方正を求める男”
“腕によりをかけた、最後の晩餐”
“一緒に食べる…毒入りスープ”
ああ、家を教えられないはずだ…女の家はここなんだから。
そして、殺したい男は…僕だ。
じゃあ…このスープに…?
僕は、それを吐き出そうと台所へ向かおうとしたが、どうにも立ち上がれない。
腰が抜けてしまったのか、毒が回ってきているのかわからないが、体に力が入らないのだ。
おかしいな…
ドラマやなんかで見る毒殺は、こんなに長いこと掛からない。
その間も、女…いや、彼女は延延と喋り続けた。
「君が私に退屈しているってわかった時、すごく…ショックだったわ。
君の目がいろんな女にいっていることもわかってた。それも、私とは違う派手なコばっかり…。
最初はね、君の好みに合わせたくて…メイクや髪型を真似てみたの。
そしたらね…別人みたいなの!
それで、街に出てみたくなって…うんと短いスカートや、高いヒールも買って出掛けたわ。
面白かった!世界が違うの!
そりゃあ今までだって楽しかったけれど…君が飽きちゃうのも、わかる気がしたの。」
そこまで言うと、彼女は僕を膝枕するみたいに寝かせた。
そして、頭を優しく撫でるんだ。
「そんな時だったわ…街で女のコに声を掛けている君を見たの。
君は、いつも好んで見ていた派手なコだけじゃなくて…
私に似た感じのコにも、関係なく声を掛けていた…。
それって、“私以外”なら誰でもいいってことだと思ったわ。
君は、“私自身が”嫌いになったんだって。だからね…」
彼女は僕の顔に覆い被さるようにすると、息のかかる近さで言った。
「“私”が、君の浮気相手になろうと思ったの。」
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