中毒

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「なあ、今月苦しいんだよ。ホテル代もったいないから、おまえの部屋行こうよ。」 「嫌よ!だったらあんたの部屋でいいじゃない。」 あの女は、絶対に自分の部屋に僕を入れなかった。 それどころか、住所も、最寄りの駅すら教えてはくれなかった。 一方、僕の部屋はというと… 「馬鹿なこと言うなよ、家には…。」 「彼女が居るもんねー。」 そう、僕は彼女と同棲していた。 だから、あの女と会うにはホテル代が必要で… 僕は自由になる金のほとんどを、それに使ってしまっていた。 「あたしの家にだって、待ってる人が居るの。今日は私が払うから…ホテル行こ?ね?」 僕はこの時、あの女にも恋人が居ることを初めて知った。 お互いに遊びだったし、僕が言えた義理ではないのだが、 なにも知らされていなかったことに腹が立って…その日は、うんとヒドくしてやった。 もっとも、あの女は喜んでいたけれど。 しかしまあ…僕という男は勝手だ。 あの女に男が居るとわかってから、独り占めしたくて堪らないのだ。 僕は頻繁に女を呼び出し、夜遅くまで家を空けることが多くなった。 彼女には“仕事が忙しくて…”と時々弱音を吐いておいた。 僕を信じきっている彼女は、心配はしても、疑うことなどないだろう。 …信じきっていたのは、僕のほうだったのかもしれないがね。
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