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「もう別れたらいいじゃない。」
あの女は、いつも絶妙なタイミングで動く。
出会った時もそうだった。
“退屈そうね”って声を掛けられて。
その通りだった俺は、すぐに誘いに乗った。
そして今も…。
「そんなに嫌なら、別れちゃえばいいじゃない。」
「そう簡単に言うなよ。高校の時から付き合ってるんだぞ?」
「…だから…なに?」
「なにって…。」
女の言葉はいつもきつい感じだったが、この日は特にそう思った。
「なに、おまえ…機嫌悪いの?」
「別に…。」
女は、やっぱり機嫌が悪かった。
「あたし、今日は帰るわ。」
「え?あ…ちょっと!…なんだよ。」
ワケがわからないまま肩を透かされた僕は…その日、久々に早く帰った。
「あ、おかえりなさい!今日はね、新しいメニューに挑戦したの!」
あの女と違って、何故か機嫌のいい彼女が、
いつもより手間の掛かった料理を作って待っていた。
まるで、今日は早く帰るのを知っていたんじゃないかって気がして…
その笑顔に、ますます腹が立った。
「ごめん…食欲ないんだ。」
…別れたい…心からそう思った夜だった。
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