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「今日、やるわね。」
仕事をさぼって待ち合わせたランチタイムのレストランで、女はビールを片手に宣言する。
「き…今日…?」
突然のことに返事もおぼつかない僕に、女は身を乗り出して言った。
「そう、今日…今夜。
夕食は腕によりをかけて作るわ。彼とあたしの、最後の晩餐だから。」
「そうか…うん、そうだな。」
嬉しそうな女の横で、僕は酔えもしないのにノンアルコールビールを何度もあおる。
…と、女がこう申し出た。
「あたしがやったら、連絡してあげようか?」
「え?」
「あたしが先にやらないと…あんた、やれないでしょ?」
女の、全てを見透かしたような言い方は、虚栄心をくすぐり、拒否を許さない。
「…ああ、たのむよ。」
……僕は今日、彼女を殺すことになった。
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