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ジョージが真剣な顔つきになった。
「その話もうすこしくわしく聞かせてくれないか」
カイが浅黒い顔で片方の眉(まゆ)を吊り上げていった。
「心配ないだろ。きみたちは貴重な『須佐乃男(すさのお)』操縦者候補なんだから。進駐軍も肝心の本土決戦前に命の危険にさらすようなことはしない」
タツオは昼食の手を休めてつぶやいた。
「確かにぼくの聞いているところでは、操縦者候補にスペアはない。上はウルルクでなにをさせる気なのかな」
王族の血を引くスリランが上品に小首を傾(かし)げた。
「詳しい説明はぼくたちも受けていない。けれど、氾(はん)=エウロペの進駐軍とどこかで実戦を体験させたいというところなんじゃないか。いきなり本土防衛戦というのは荷が重すぎる」
テルが新しいフォークで子牛のカツを口に運んだ。目も上げずにいう。
「ああ、勝ち癖をつけるためにもな。実戦か……腕が鳴るな」
クニが舌打ちした。顔が青ざめている。
「ウルルクなんて、おれは絶対嫌だ」
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