13(承前)

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 進駐軍退役後は地方公務員を夢見るクニには、海外での実戦は想定外かもしれない。テルがぼそりという。 「いけといわれりゃ、どこへでもいく。それが進駐軍だろ。今この瞬間も日乃元から数十万の軍人が海を渡っているんだ」 「くそ、昼飯なんてのんびりくっていられるか」  クニが食器を放りだして席を立った。背中を見送るテルがいった。 「あいつは本気で本土を守るつもりがあるのか」  タツオはなにもいえなかった。日乃元は守りたい。だが同時に氾やエウロペの若者を無用に殺したくもない。世界はすでに戦争と殺傷に満ちあふれていた。  もし「須佐乃男」の実力が評判どおりのものなら、自分たちはすくなからざる数をさらに上乗せすることだろう。  華々しいはずの日乃元本土防衛決戦が、タツオの胸の底に重苦しく沈んでいった。
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