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 その日から一週間、午前中は最新兵器や新戦術の座学、午後からは圧倒的な戦力相手の模擬戦という過酷なスケジュールが続いた。  タツオにもっとも疲労感を与えたのは、前日の夕方になるまで翌日のスケジュールがわからないことだった。休日も不規則で6勤1休といった規則性もない。というより北不二総合演習場にきてから、まともな休日は最初の数日だけだった。戦闘訓練と座学が始まってからは、半休が2日ほどあっただけだ。  だが「須佐乃男」操縦者候補たちは奮闘していた。蓄積した疲労をとるため休み時間のほとんどは横になり睡眠をとっていた。15分の休憩があればその時間だけ死んだように眠り、つぎの課題にそなえる。気がつけば28人の候補者たちは誰もがそんな芸当を身に着けていた。  訓練と学習の総合順位は毎日更新され発表されていた。トップの4人の成績が他を引き離していたので、自然に逆島断雄、菱川(ひしかわ)浄児(じょうじ)、東園寺(とうおんじ)彩子(さいこ)、天童(てんどう)寂矢(じゃくや)は「優4」と呼ばれ、周囲から正操縦者候補と目されるようになった。  その時点で優4の間の点差はごくわずかで、日替わりで首位を競っていた。ただし不思議なことにタツオはジャクヤ、ジョージとは同じチームを組んだことがあったが、まだ一度もサイコと同じ班になったことはなかった。サイコのほうで兄の死の経過もあり、タツオと同組になるのを拒否しているのではないか。タツオは口には出さなかったが、そう心の中で考えていた。サイコの頑(かたく)なさを思うと、そちらのほうがおたがいのためにもいいのかもしれない。  ウルルク派遣などなにも知らされぬまま、タツオたち新任少尉はこれ以上はないほど濃厚な訓練をひたすら北不二演習場で積んでいた。
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