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 2時半の数分前には、甲3区に到着していた。照明車両のサーチライトで照らされたごつごつとした人工の岩場が、この訓練場の特徴だ。人の背ほどある巨岩が巨大な迷路のように並んでいる。テントの脇にはほとんどの訓練生が顔を揃(そろ)えていた。  光の届かないどこかでまた10倍を超えるようなベテラン兵士が、訓練生を叩き潰(つぶ)そうと控えていることだろう。これまでの30回を超える戦闘訓練で殲滅(せんめつ)をまぬかれたチームはいなかった。遅かれ早かれ圧倒的な兵力を誇る敵にタツオたち操縦者候補は敗れ去っている。だが、同時にじりじりと全滅までの生存時間が伸びているのは確かだった。  これまでの記録は2時間4分。記念碑的なレコードを出したのはジョージが率いたチームで、罰として敵方の進駐官は高気密性のレーザー感知式訓練服を着たままフル装備で10キロの駆け足を命じられた。それ以来、訓練生のあいだでは、「やつらに10キロ走らせろ」が合言葉になっている。 「逆島、菱川、遅い!」  腰に両手をあてて、そう叱責(しっせき)したのはサイコだった。ショートカットにした黒髪に黒い制服が似あっている。体重は5~6キロ落ちているのではないか。きりりとしまったウエストも、肉の落ちた頬(ほお)も剃刀(かみそり)のような切れ味だ。  ジョージがぼそりといった。 「このチームは豪華キャストだな」
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