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『アヴェル様…っあなたは…』
「熊さん、僕を庇うなんてやめてよ…っ心臓が止まるかと思った…」
朝日の心臓はまだばくばくと大きな音を立てている。熊が打たれずすんだことでまた思わず安堵の涙が溢れる。
「ーーお前、ディアヌスの言葉が分かるのか。」
赤髪の彼はまだ驚愕の表情でこちらを見つめている。
「朝が来たから、まさかとは思った。動物と言葉を交わせるということはお前が…アヴェル…っ!」
そう言うと彼は苦痛に顔を歪ませてその場にしゃがみ込んだ。
「どうしたの!?」
まだ涙溢れるそのまま、朝日は赤髪に駆け寄る。
ーーそして驚愕した。
彼の体は、ボロボロだった。
至る所に、傷。きっと白い色をしていた彼の服は、血で赤く染まっていた。
「く…熊さんどうしよう!すごい傷だ…っ」
『アヴェル様、落ち着いて。
このままじゃ彼の命が危ない。
ーー治療しましょう。』
意識が途切れたらしい赤髪の彼は、朝日に寄りかかるようにしていた。
彼の心臓の音が辛うじて聞こえる。けれどそれが弱まっている気がして、朝日はとても怖くなった。
「治療…どうしたらいいの?熊さん」
『彼の胸に手を置いて込めるのです。
彼を癒したいという気持ちを。』
「気持ちを、込める…?」
『大丈夫。アヴェル様にはできます。
自分を信じて。』
朝日には訳が分からなかったが、
やるしかないらしい。
熊さんは自分を信じろといった。
ーーもし、僕にそんな力があるのなら…。
お願い。彼を治して。
そう朝日は強く強く願った。
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