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ーー瞬間、彼の体を覆うように光が輝いた。
まるでドームのようなそれは、真っ暗な洞窟を明るく照らしていた。
「うわ…っ!」
『アヴェル様。落ち着いて。大丈夫です。そのまま…』
自分の手から光が溢れ出したことにびっくりした朝日だが、熊の言葉で深呼吸をしてまた気持ちを持ち直した。
(彼の怪我が、治りますように…どうかお願いします。)
ーーどれ位そうしていただろうか。
朝日が微かな疲労感を感じ始めたその時だった。
「ん…っ」
赤髪の彼が呻きを、あげた。
さっきまで糸が切れたように意識を失っていた彼が、気がついたようだった。
「熊さん!彼が…」
『そろそろいいでしょう。アヴェル様、ゆっくり力を抜いて。』
その言葉どうり手に込めていた力をゆっくりと弱めていく。
ドーム型に彼を覆っていた光は、朝日の手に吸い込まれるように戻っていった。
「…ん…」
「大丈夫、ですか?」
朝日が声をかけるとその目はゆっくりと開かれていく。
「…アヴェルさ、まなのですか?」
彼は覚醒した瞬間、僕を見て静かに言った。
「この世界に、朝がくる…」
彼がゆっくりと視線を向けた。
洞窟の外に朝日が昇ったのだ。
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