第1章 アヴェルというもの

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ーー瞬間、彼の体を覆うように光が輝いた。 まるでドームのようなそれは、真っ暗な洞窟を明るく照らしていた。 「うわ…っ!」 『アヴェル様。落ち着いて。大丈夫です。そのまま…』 自分の手から光が溢れ出したことにびっくりした朝日だが、熊の言葉で深呼吸をしてまた気持ちを持ち直した。 (彼の怪我が、治りますように…どうかお願いします。) ーーどれ位そうしていただろうか。 朝日が微かな疲労感を感じ始めたその時だった。 「ん…っ」 赤髪の彼が呻きを、あげた。 さっきまで糸が切れたように意識を失っていた彼が、気がついたようだった。 「熊さん!彼が…」 『そろそろいいでしょう。アヴェル様、ゆっくり力を抜いて。』 その言葉どうり手に込めていた力をゆっくりと弱めていく。 ドーム型に彼を覆っていた光は、朝日の手に吸い込まれるように戻っていった。 「…ん…」 「大丈夫、ですか?」 朝日が声をかけるとその目はゆっくりと開かれていく。 「…アヴェルさ、まなのですか?」 彼は覚醒した瞬間、僕を見て静かに言った。 「この世界に、朝がくる…」 彼がゆっくりと視線を向けた。 洞窟の外に朝日が昇ったのだ。
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