第1章 アヴェルというもの

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思えば朝日は昨日の晩から歩き続けだ。 足も、かなりの疲労を訴えている。 喉の渇きは水はさっき湧いていた川の水を飲んだから幾分満たされているが、丸2日何も食べず歩き続けている体はもう限界が近かった。 「……。」 ふう…と地面に腰を下ろした朝日は、未だ直立不動の赤髪の彼、ルギアに目をやった。 彼は真っ直ぐ天を見上げ、微動だにしない。 (そうか。ルギアさんは、夕焼けを見るのも初めてなんだ。) そうして彼の表情を下から盗み見た朝日は少し驚いた。 逞しく大きな体で天を仰ぐその表情には、一切の感情が見えなかったからだ。 何の感情も垣間見れないその表情が、 朝日は少し、怖かった。
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