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「今日はCMの撮影があるんだ」
「CM?すごい……」
「その外にも大きな仕事が幾つか決まりそうだって。事務所も今、俺に力を入れてくれているみたいだから、期待して貰えている内に懸命に頑張らないとね」
「―…」
〝頑張らないと”
そう話してくれる悠馬は、とても憎しみや復讐の為に仕事をしているとは思えない。
希望や明るい夢を抱く眼差しに見えるのに、その奥にはまだ秘めた思惑があるの?
「繭子さんは頬、大丈夫?擦りむいたところもまだ痛む?」
「私はだいじょうぶ。頬っぺたももうそんなに腫れてもいないし……悠馬がよくしてくれたから落ち着けた……」
「また、しばらく仕事が忙しいけどなるべく連絡するから」
「うん。でも、そんなに心配しないで」
「心配するよ。帰りが遅くなる時は特に気を付けて」
「わかった……」
私のことだって、こんなに気づかってくれる。
「あの……悠馬……」
「繭子さん、御礼だったらもういらないよ。じゃあ、そろそろでるから」
紙幣だって、もう受け取ってはくれない。
私達の関係はこれから何処に向かっていくのだろう。
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