24、ユスリ

5/11
前へ
/40ページ
次へ
このまま、この部屋で会い続けることも悠馬にとって良いとは言えない。 仕事も多忙になっている今、距離は少し開けておいた方が良いのかもしれない―… 「……行ってらっしゃい」 「行ってきます」 玄関を出ていく間際、私は悠馬の身体を抱きしめていた。 「一人になるのが心細い?」 「それもあるけど、悠馬の温もりを感じたくて―…ごめんね、引き留めて」 「可愛い繭子さん」 私なりの充電のつもりだったと思う。 今日は金曜日。 仕事がある。 マンションを出ると、どんよりとした雲が私の足を重くした。 でも、学校に行かなきゃならない。 バスを降りて並木道を歩いていると、 「椎原先生、おはようございます」 岬先生が何時もみたいに声をかけてくる。 「おはようございます……岬先生……」 「あら?今日は珍しくしっかりメイクしてます?」 「え、ええ……たまにはと思って……」 本当は昨夜ぶたれた頬を目立たせないようにする為。 「気のせいか頬が少し腫れてます?チークのせい……じゃないですよね。手もすり剥けているし」 「これは……ドジをして転んでしまって……」 「あら、それは大変」
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

53人が本棚に入れています
本棚に追加