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このまま、この部屋で会い続けることも悠馬にとって良いとは言えない。
仕事も多忙になっている今、距離は少し開けておいた方が良いのかもしれない―…
「……行ってらっしゃい」
「行ってきます」
玄関を出ていく間際、私は悠馬の身体を抱きしめていた。
「一人になるのが心細い?」
「それもあるけど、悠馬の温もりを感じたくて―…ごめんね、引き留めて」
「可愛い繭子さん」
私なりの充電のつもりだったと思う。
今日は金曜日。
仕事がある。
マンションを出ると、どんよりとした雲が私の足を重くした。
でも、学校に行かなきゃならない。
バスを降りて並木道を歩いていると、
「椎原先生、おはようございます」
岬先生が何時もみたいに声をかけてくる。
「おはようございます……岬先生……」
「あら?今日は珍しくしっかりメイクしてます?」
「え、ええ……たまにはと思って……」
本当は昨夜ぶたれた頬を目立たせないようにする為。
「気のせいか頬が少し腫れてます?チークのせい……じゃないですよね。手もすり剥けているし」
「これは……ドジをして転んでしまって……」
「あら、それは大変」
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