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更に、
「そうそう椎原先生、悠馬のファンサイトって知ってます?」
〝悠馬”の名前まで口にする。
「いえ―…」
「まだ雑誌のモデルなんかが主だった頃からあるんですけどね。その頃からのファンって結構コアなファンが多いんです。悠馬って何だかこう―…あの美しさの中に哀愁漂う何処か訳アリの雰囲気があるから、そんなミステリアスな部分に魅かれているコ達も結構いるんです」
そんな事、私だって感じてる―…
深見さんは何がいいたいの?
「だから、悠馬に忍び寄る悪い女がいるなんて知ったら、みんなきっと許さないだろうなぁ……というか、実際みんな怒ってるしね」
「深見さん―…話がよく……」
「わかんないの?国語教師の癖に?じゃあ、仕方ないからわかりやす~く説明してあげる」
「―…」
「わる~い女が悠馬から離れない限り、みんなその女に罰を下そうとしてるの。あたしだけじゃなく、コアな悠馬ファン全てから狙われているってこと」
大きく目を見開いて深見さんはそう言うと、非常階段を下りて行った。
しばらく立ち尽くした後、深見さんが押し付けた煙草の吸殻を拾う。
昨夜の帰り道の出来事と、まだ日の昇らない時間に見た夢がフラッシュバックしてくる。
ポタ、
ポタポタ―…
灰色の空から雨が降ってきた。
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