25、駆ケ引キ

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私は、 「―…わかり……ました」 柘植さんの話を聞くという選択をした。 どれだけ大切な話なのか、そもそも本当に重要な話なのかもわからない。 柘植さんの思惑に手招きされていて、また、浅はかだった、バカだったと後悔してしまうかもしれない。 けど、 悠馬に関わる事だと聞くと、頑なに無視は出来なかった。 柘植さんの車に乗り、柘植さんが話が出来るという場所へと付いて行った。 場所は、入り組んだ場所にある看板さえ出ていない料亭。 門をくぐるとトンネルのように生えた笹があり、その中を石畳の上、歩いていく。 著名人達が使用する、隠れ家みたいな高級料亭。 通されたのは、奥にある個室の部屋だった。 「繭子さん、飲み物は何にしますか?」 「いえ―…それよりも早く重要だという話をして下さい」 「取り敢えず冷酒にしましょうか」 「あの、柘植さ―…」 「ちゃんと話はします。重要な話は焦ってするものでもない。飲み物ぐらいはあってもいいでしょう?」 急かす私に柘植さんはそう言って、飲み物を頼んだ。
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