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「ケガはない?」
「う、うん―…」
そう答えたけれども、
「眼鏡が落ちてる」
頬をぶたれた時に落ちてしまった眼鏡に悠馬が気付く。
悠馬が拾い上げてくれた眼鏡はフレームも曲がって傷ついていた。
柘植さんがお詫びに買ってくれたものだけど、また、駄目にしてしまった―…
「繭子さん、顔を見せて」
「え……」
「もう少しこっちに来て」
僅かに明るさのある場所で私の頬に手を添えると、悠馬は顔を近付けた。
「もっと近くに」
「っ……」
濃い茶を帯びた瞳に見つめられる。強い眼差しはインペリアルトパーズを彷彿させるみたいに美しい。
美しくて、怖いほどに。
「赤く少し腫れてる―…」
そこには怒りが見える……
「ご、ごめんなさい……ちょっとぶたれただけで―…大したことはないの……」
「警察に行こう」
「警察だなんて……本当にそんな大げさな事じゃないの……他に何かされた訳でもないし……」
「それは?」
「こ、これは……学校の資料……こんなになっちゃったけど……」
投げつけられた紙の事を悠馬に聞かれて、焦って、とっさにそんな返しをしてしまった。
皺くちゃになった紙を見えないように折り畳み、鞄にしまう。
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