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「警察に行くなら勿論、俺も付き添うよ」
「う、ううん……日の沈みも早くなったし、これからは気を付ける……」
「相手の顔は見た?」
「顔は―…暗がりでよく見えなかった。抵抗したら直ぐに逃げちゃったし―…こんな事って初めてだから、ちょっと驚いちゃっただけ。私は大丈夫だから」
「本当に―…?」
頬に触れたまま、今度は心配そうに私を見つめる悠馬に、「うん」と、なるべく笑顔に見えるように表情を作って頷いた。
警察になんて行けない。
もし、今回の件に私の生徒である彼女が関わっていたらという気持ちが浮かんでしまう以上、絶対に行けない。
悠馬にだって迷惑がかかってしまう。
「今はただ、早く帰りたいの……」
「歩ける?」
「うん……」
悠馬に優しく支えられながら、ここよりは明るい道へと出ていく。
「あ……」
ベーカリーの袋が落ちているのを見つけた。
拾い上げて中を見ると、せっかくのパンが潰れてしまっていた。
私が踏んでしまったのか、あの覆面の男が踏んだのか、それとも、通行していく人が気付かずに踏んでしまったのか―…
「これじゃ、食べれないね……」
砂も入っているし、残念だけど食べれない。
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