53人が本棚に入れています
本棚に追加
「一度家に帰ったら、俺が何か買いに出るよ」
「悠馬はまだ食べていないの……?」
「ケータリングを食べたから俺は大丈夫。けど、繭子さんはまだなんだよね?」
「まだだけど―…食欲がなくなっちゃって……」
「じゃあ、お腹が空いたら言って。その時は俺が買ってくるから」
「―…ありがとう」
それからも私は月明かりのない夜空の下、マンションまで悠馬に支えてもらいながら歩いた。
人工的な明かりは、あっちでこっちで点いたり消えたりしている。
私の部屋には悠馬の手で明かりが灯された。
「まず、頬を冷やすね」
悠馬はキッチンに行くとビニール袋に氷を入れて、それをハンカチでくるんで私の頬に当ててくれる。
「痛い?」
「少し……」
でも、本当に少しだけ。
痛みよりもずっと、悠馬の優しさを感じてる。
あなたが女性を扱う上で優しいのは知ってる。
だけど、近頃の優しさは、また違う温もりのある優しさを感じてしまう。
最初のコメントを投稿しよう!