第1章

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「誰か助けて!!!」 真っ暗な竹林、とある一本の竹に括り付けられた女性は必死に叫ぶ。 彼女の名前は有森香苗、年は27歳で明日婚約者との結婚式を控えている幸せの絶頂にいる女性である。 今日は友人たちが独身最後の日だからと、パーティーを開いてくれて香苗は数時間前まで、友人たちと独身最後の夜を楽しんでいたのだが、少しお酒を飲んだせいもあるのかいつの間にか意識が飛んでしまい、いつの間にかこの状況に至っている。 「誰か、誰かー!!!」 必死にもがく香苗。 だが、身体は地面に横たわり足は竹に括り付けられ、手もキツク縄で結ばれている。 カサカサと頬に当たる葉の感触が痛くて、香苗は思わず顔をしかめた。 ブランド物のスーツも土で汚れていて、早くクリーニングに出さなくちゃ!と考えながらも必死に縄を解こうともがくが、キツク結ばれているのか縛られている箇所から血が滲むだけで、縄はほどける様子がない。 そういえば今は何時だろうか? 明日は大切な一生に一度の結婚式なのに、早く帰らなくては婚約者が心配してしまうともがいていると、ふとあることに気づいた。 「え………?」 足が先ほどより持ち上がっているような気がする………。 いや、確実に持ち上がっているのが分かり香苗の顔は青ざめた。 そういえば竹の成長スピードは速く、種類によっては一日で1m以上伸びる物もあるという。 もしこのまま成長を続けてさかさまになってしまったら?きっと、頭に血が集まって死ぬことは確実だし、何より人様に見せられない無残な姿になってしまうだろう。 「いやああああああ!助けて!誰か助けてええええええ!!!」 香苗は自他ともに認める美貌を持ち合わせており、醜いことをとても嫌う。 それが例え自分の死ぬ姿でも同じで、顔が崩れた自分の姿なんて想像したら死よりも恐ろしいものなのだ。 私は明日世界一美しい花嫁になるのに!それが、こんな汚い場所で醜い姿を晒すなんて!!! 必死にもがく香苗、しかし無情にも助けを求める叫びは竹林に響き、竹は伸び続けるだけだった。 リーンゴーン……… とある教会で一組のカップルが多くの人たちに見守られながら幸せの瞬間を迎えていた。 幸せそうに微笑む男女、おめでとうの声とライスシャワーをかけられながら、新郎新婦は嬉しそうにお互いを見合って微笑む。
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