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「ただいまー」そういっても返ってくるのは「うるせーよ!」という父親の声だけ。私の父親は、なんにでも怒鳴る。例えば、それは隣の遠藤さん。例えばそれは近所の小学生。そして最近は禿げた上司。当然首を切られてお役御免。今では怒鳴れるのは電柱と私だけ。  なんで禿げた上司に怒鳴ったのかは、死んだお母さんの遺影につぶやいているのを聞いて知った。いわく、「できない上司と、どうしていいかわからんからどなっちったよ」だと。  私はやっぱり、ここは娘としてはどうするべきなのかなーなんて思っていた。で、考えたら、やっぱり父親は最近酒におぼれているので、とりあえず冷蔵庫の中と周りにあった酒をすべてゴミ集積場に置いておくことにした。  ゴミ集積場で、中身を出しているとき(こういうところは自分でも偉いと思う)捨ててあった雑誌に、「奇跡!あのM大に娘を送った家族!」なんてほのぼのした、わたしにとってはほのぼのしすぎて興ざめな見出しが載っているのを見つけた。  ふざけんな 私はキレて雑誌を踏んでやった。踏んでいて、やはりむなしくなった。涙が出そうで出なかった。
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