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数日後。
美咲のケータイが、先日とは別の同級生からのメールを受信した。
『生まれました! 女の子です! 逆子で大変だったけど――』
どうやら出産ラッシュらしい。
『ところで美咲は、体大丈夫?』
またか。
友人たちの間では「美咲=体調不良」なのか。
情けない。
でもこれは自分でまいた種だ。
ばか正直に伝えすぎた結果だ。
友達だから、と思っていたが、その友達は美咲の話をどう思っていただろうか。
――何もかも正直に言う必要はないんですよ。
雪洋の言葉が蘇る。
ああ、そっか。
――肩の力が抜けた。
目を閉じ、これから打つ文面を頭の中で練る。
――よし。
美咲は目を開けて、返信を打ち込んだ。
『出産おめでとう。私のことは大丈夫。心配かけたね。元気だよ』
これで自分でまいた種から出た芽は、いくらか摘み取れるだろうか。
送信するとケータイを机に置き、縁側に出て腰掛けた。
空を仰ぐ。
太陽の光が今日も見守るように降り注いでいる。
心地よい風が、頬をなでていった。
だがこの清々しい気分は、そう長くはもたなかった。
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