第1章

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 きらめく花瓶に挿した、色とりどりの花々。柔らかな日射しは、それを優しく包み込む。金色の額縁に収められたそれは、私のすべてを注ぎ込んだそれである──はずだった。 「え、準大賞?」 顧問に呼び出されて意気揚々と職員室の扉を開いた私が受けたのは、あの花の絵が地元で名高い画家の名前が付いたコンテストで、準大賞に選ばれたという知らせだった。そのコンテストへの応募は、よくある夏休みの課題の一つだったのだけど、美術部長という立場上、プライドがあったのだ。しかし、準大賞──大賞は、別の人物。 「あの、大賞取ったのってもしかして──」 私は恐る恐る聞く。対称的に、顧問はさらっと答えた。 「ん?ああ、大賞ね。今さら隠す必要もないから言うけど、高田くんよ──」  高田洋一。同じ高校に通う美術部の1年生である。彼はコンテスト等があれば必ず応募し、頂点をさらっていくのに、なぜか美術部にはほぼ来ない。幽霊部員なのだ。私は、彼より上の賞を取ったことがなかった。それは絵にプライドを持ち、絵がアイデンティティと言っても過言ではない私にとって、屈辱だった。 「じゃあ、今日も秋の展示会に向けて作品制作していきます」 私が言うと、「はーい」と気の抜けた返事をして、部員はそれぞれのキャンバスに向かう。今日も欠席1名。秋の展示会は順位をつけるものではなく、市内の高校の美術部が作品を持ち寄り、公共施設に展示し鑑賞しあうものである。そしてこの展示会を最後に、私たち3年生は引退する。 「桑島さん、ちょっといい?」 顧問に声をかけられ、私は筆を置いた。廊下に出たところで、顧問は眉をハの字にしながらも笑みを作りながら切り出す。 「高田くんのことなんだけど・・・秋に向けての制作もしているところだし、ちょっと声かけてみてくれない?」 4月当初はまだ美術部に顔を見せていた高田洋一。正直、彼がいなくてホッとしていた気持ちもあった──。 「私より、同じ1年生の方がいいんじゃないですか」 「そうかー・・・うーん・・・」 と明るい声を出しつつ唸ってみせる顧問。幽霊部員の世話も、部長の仕事なのか・・・。来たくない奴は来なければいいのに。 「じゃあ、1年生にも言ってみるね。でも、桑島さんからも言ってもらえたら嬉しいな」
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