第1章

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 ──美術部には顔出しません。展示会には出品します。  また胸に不快感が生まれた。顔は出さないけど展示会には出品しますって?  ──グループ退会してたけど、美術部やめるつもりではないの?  ──美術部は続けます。でも、ラインは退会させて頂きます。  「・・・・・・はあ?」 思わず声に出していた。でも、実際に意味がわからない。ラインのグループは連絡手段であり、ある種の名簿的役割も果たしている。そこに名前がないのでは部をやめると取られても仕方ないし、第一美術部にも顔を出さないのに、いつどのような目的で作品を描くのかという情報をどうやって仕入れるつもりでいるのか。秋の展示会は乗り切れたとしても、これから必ず困る日が来る。 しかしどう答えて良いかわからず、手が止まってしまう。スマートフォンを握ったまま10分近く経過していた。既読がついているのに、変に思うかな。そう考えると、何て返事をすべきか、余計に焦ってくる。  ──わかった。  やっとのことでそれだけ返した。とりあえず、明日他の人に相談してみようなんて、言い訳のように考えていた。  「うーん、確かに意味わかんないねー」 香織は笑いながら首をかしげた。私の1つ前の席に座る彼女は通路に足を投げ出している。 「だよね!」 私は机から身を乗り出していた。 「美術部にいるならさあ、ちゃんとやることやってほしいよね!美術室の掃除もしない、話し合いにも来ない、活動の説明すら聞きに来ない!どうやって美術部やってくつもりなの!」 怒る私を宥めるように、香織はさらっと返す。 「でもさあ、考えてみれば男の子一人だけだよね。やっぱ男の子一人って、居づらいんじゃないの?」 はたと気づいた。そうなのだ。美術部は、なぜか女子率の高い部活の定番。我が部も例外ではないどころか、彼しか男子がいない。香織の意見は、目から鱗に等しい見方だった。しかし、すぐに思い直す。 「でも、それはわかってたことでしょ?最初の部活説明会で、現在の部員は女子だけって言ったもの。それに、ラインを退会することないじゃない」 「そうだよねえ・・・」 香織は髪の毛先を弄ぶ。私はなんだか気持ちがざわついて、「ちょっとトイレ行ってくる」と席を立った。無論トイレに行くつもりなどなかった。宛もなくただ廊下を歩いた。
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